私の見る夢はRPGのようだ。笙野頼子のレストレスドリームという小説とほとんど同じ。悪夢の中で私は繰り返し死ぬ。死ぬ選択を避けながら夢を見る度にゲームを進めて行くのだ。苦痛や恐怖を味わうことがゲーム終了まで繰り返されるとしたら、睡眠障害になってしまうのは致し方のないことではないだろうか?幾つかは終了させたのだが、自分がまだ未終了の夢を見続けていることは分かっていた。終了してようやく目覚めている時へ持ち帰れる。どんな夢を見ていたのかを目覚めている時にも思い出せるようになる。
私は引っ越して来たばかりの部屋で片付けをしている。前の住人が窓に貼っていた紙が何枚か残っていて、絵が書いてある。人の顔なのだが、円に目らしき線と髪が書かれているだけの、かろうじて顔だということだけがわかる絵。なんだろうと思いながらほかの何枚かと一緒にはがし、何の気なしに裏返すと、墨と朱赤で呪いの言葉が書いてあった。剥がした者を呪ってやると文字が並んでいて、それを読んでいる間に私の顔の周りで静電気の放電のように、ビシッ!バシッ!と音がして顔を叩かれるような痛みが何もない空間から私に向けられ、あぁ、呪われてしまった…どうしたらいいんだろう…と恐怖してしまう。いつもなら、呪いをなんとか解こうと奔走するのだが、なぜかこの時は違った。片付けを続けたのだ。誰か知らないけど呪われちまった、どうしよう、と思いながら半泣きで荷ほどきをし、食器を棚にしまったりしていたのだ。窓から剥がした呪いの紙の上に梱包していた紙を重ねて置いていき、それらをまとめてゴミ箱に捨て、呪いの紙も一緒に捨てたことに気づいて慌てたのだが、今さら拾っても何も変わらないな…とそのまま可燃ゴミにまとめてしまった。そうしているうちに、ご近所の方が茶菓子を持ってやって来たので、茶を淹れてお喋りをした。呪われてるのになぁ…どうしようかなぁ…と思いながら一緒に腰掛けて茶をすすり、相手の話に適当な相槌を打って過ごした。紙をはがした窓は何もなくなったので、外がよく見え、日が差し込んで部屋は明るかった。はがした方がスッキリしてイイなと思った。呪いを解くために何もせず、茶を飲んで過ごした。この夢を持ち帰れたということは、終了したということなのだが、なんで終了なのかわからなかった。この夢のように誰だかわからない私を迫害する者は両親のどちらかなのだが、私を呪った紙に書かれた顔はおそらく母だ。 母を可燃ゴミに出して、何事もなかったかのようにご近所さんと茶を飲んでしまった。内心穏やかではなかったけれど、それがおそらく正解だったのだろう。呪いたい人には呪わせておくしかないし、呪いも私が恐怖して解こうと奔走しなければ、私への影響力はゼロだ。母が私をどれほど呪おうと私の人生を左右させなければ良いのだ。母が死ねば、もう直接に私に呪いの言葉を吐きかけることも、いびることも出来ない。紙に書かれた呪いは私の記憶に書かれた呪い。私さえ望めば、可燃ゴミに出せるのだろう。夢の中で出してしまったように。
これで悪夢が終わってくれたら、と一つクリアするたびに思う。現実か夢かどちらかで休めるようになりたい。何処かで休まないともうこれ以上耐えられない。これから眠るけれど、耐えられない状態がまだ続くのかと思うと怖くて眠りたくない。誰かに助けて欲しいが、こればっかりは無理だ。私の悪夢は現実を押しつぶしているようで、私の人生が侵食されているように思えるのだが、それに対して私は何も出来ないのだ。十代の頃からずっと眠るのが嫌だと思ってしまうような悪夢を見ている。いつ迄この状態が続くのだろうか。死ぬ迄だろうか。死んだら悪夢を見なくて済む、そして現実も失う。二つとも手放せるのだ。少し安心。眠っていることからも、起きていることからも逃げたい。苦しい。
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